エーリッヒ・フロム「愛するということ」要約・まとめ

わたしの座右の書、エーリッヒ・フロム「愛するということ」。
はじめてフロムの文章に触れる方から、少しとっつきにくいという声も聞こえるので
今回はわたしがこれまで通算10回以上は読み返している中で
とくに印象に残っている部分を抜粋してまとめてみたいとおもいます!

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はじめに

自分の人格全体を発達させ、それが生産的な方向に向くよう、全力をあげて努力しない限り、人を愛そうとしても必ず失敗する。満足のゆくような愛を得るには、隣人を愛することができなければならないし、真の謙虚さ、勇気、信念、規律をそなえていなければならない。これらの特質がまれにしか見られない社会では、愛する能力を身につけることは容易ではない。実際に、真に人を愛することのできる人を、あなたは何人知っているだろうか。p5.「はじめに」

…しょっぱなからドぎつく、ストイックに攻め入ってくる文章。笑
今回は個人的に「なるほど」と思ったところを拾っていきました。
主に下記6つの話題が議論できそうだなと思っています。

「愛」という概念に対する現代人の誤解・幻想への指摘

現代社会に生きる多くの人は
「愛には学ぶべきことなど何一つない」という考え方をもっている。
その底にある前提は3つ。

たいていの人は愛の問題を、「愛する」という問題、愛する能力の問題としてではなく、「愛される」という問題として捉えている
つまり、「人びとにとって重要なのは、どうすれば愛されるか、どうすれば愛される人間になれるか、ということ」なのだ。(p12)
…雑誌のモテ特集とか、恋愛ハウツー本よく見かけますもんね。。
 愛の問題とはすなわち「対象」の問題であって「能力」の問題ではない、という思い込み
「愛する」ことは簡単だが、愛するにふさわしい相手、あるいは愛されるにふさわしい相手をみつけることはむずかしい…人びとはそんなふうに考えている。(p13)
婚活恋活、今日もお疲れ様です…
条件付きで相手を見たり見られたりするから、しんどいんですよね。。
恋に「落ちる」という最初の体験と、愛「している」という持続的な状態とを混同している
やっぱり、恋は落ちるもの、愛は育むものなんでしょうね。
どうしても「ときめき」を求めてしまいがちですが…
恋特有のあの高揚感と、じっくり育まれていく関係性・安心感は両立し得ないのか。
永遠のテーマですね。

資本主義社会に対する警鐘

恋愛本ではないので、社会全体の風潮とか大きな規模間での話も結構出てきます。
とくにこれが、今回いちばん自分のなかでは衝撃だったなぁ。


情熱の奴隷
という考え方。たしかにかつての私はそうでした。
いつもなにかに追われている。人との比較に焦ってる。

 

現代社会は、この没個性的な平等こそ理念であると説くが、それは粒のそろった原子のような人間が必要だからである。そのほうが、数多く集めても摩擦なしに円滑に働かせることができるからだ。
全員が同じ命令に従っているのもかかわらず、誰もが、自分は自分の欲求に従っているのだと思いこんでいる。現代の大量生産が商品の標準化を必要としているように、現代社会の仕組みは人間の標準化を必要としている。そしてその標準化が「平等」と呼ばれているのだ。(34)

シンプルに「誰かの役に立ちたい」とか「暮らしをもっとよくしたい」とかっていう
純粋な愛情のもとに最初はつくられたであろうシステムが、いつしか肥大化して
その円滑な運用が至上目的になり、人間を支配し”人間らしさ”を奪っていく。
個人的な経験とかでなく、社会全体を見ても愛が失われていく現象が起こってる。

そんなことが結構前から問題意識としてある私です。
これをきっかけに目を冷まし、そこから降りる選択をしました。

パートナーシップの本質について

カップルや夫婦が仲良くラブラブいちゃいちゃしてることだけが、
真のパートナーシップとはいわないのです。

二人の人間が自分たちの存在の中心と中心で意志を通じあうとき、すなわちそれぞれが自分の存在の中心において自分自身を経験するとき、はじめて愛が生まれる。この「中心における経験」のなかにしか、人間の現実はない。人間の生はそこにしかなく、したがって愛の基盤もそこにしかない。そうした経験にもとづく愛は、たえまない挑戦である。それは安らぎの場ではなく、活動であり、成長であり、共同作業である。調和があるのか対立があるのか、喜びがあるか悲しみがあるかなどといったことは、根本的な事実に比べたら取るに足らない問題だ。根本的な事実とはすなわち、二人の人間がそれぞれのそん時あの本質において自分自身を経験し、自分自身から逃避するのではなく、自分自身と一体化することによって、相手と一体化するということである。愛があることを証明するものはただ一つ、すなわち二人の結びつきの深さ、それぞれの生命力と強さである。これが実ったところにのみ、愛が生まれる。(154)

仲良しクラブじゃなくて、お互いの本質・ど真ん中をぶつけ合う。向き合う。
そこから生まれるクリエイティビティ。その可能性は1+1=2 なんてもんじゃない。
そしてカップル・夫婦に限らず、自分以外の誰かとなにかを一緒に作り上げるときに
共通してこの感覚って絶対大事。いままさに私自身も取り組んでるところです。

男性性・女性性の統合が調和をもたらす

男も女も、自分の内なる男性性と女性性が統一されたときにはじめて、内的な調和を得る。この二極性こそがすべての創造の基礎である。(58)

他者との人間関係だけに限らず、自分自身の中にも「男性性」「女性性」の両方って存在するもんね。私は仕事モードになるとやはり男性性強めで、自分の「女性性」を置いてけぼりにしていってしまう癖がまだあります。

でも、昨年マインドフルネス・瞑想にがっつり取り組んでみて、自分の中にあるいろんな部分をまるっと受け入れることを体感したら、前ほど頑張らずきばらずに、望む結果をするっと手に入れることができるようになってきました^^瞑想すごい!

「教育」と「洗脳」の違い

教育とは、子どもがその可能性を実現してゆくのを助けることである。教育の反対が洗脳である。これは、可能性の成長に対する信念の欠如と、大人が正しいと思うことを子どもに吹き込み、正しくないと思われることを根絶すれば、子どもは正しく成長するだろうという思いこみにもとづいている。(185)

やっぱり、これからの時代に必要なのは「愛ある指導者」だよね。

愛に関していえば、重要なのは自分自身の愛にたいする信念である。つまり、自分の愛は信頼に値するものであり、他人のなかに愛を生むことができる、と信じる」ことである。発達のための条件の一つは、子どもの人生において重要な役割を演じる人物が、そうした可能性にたいして信念をもっているかどうかということである。その信念があるかどうかが、教育と洗脳のちがいである。(184)
「愛とは、他の人の持つ可能性の探求に誠意をかたむけること」
やっぱり教育って、愛だよなぁ。子供たちの持っている本来の力を、可能性をとことん信じ抜くこと、それに尽きると思います。

愛は技術であり、その修練には信念・勇気を必要とするもの

本文の中でフロムは、「生きることと同様、愛は”技術”だ」と力強く言い切っています。英語の原題が ”the Art of Loving”なのにも、うんうん、納得。

愛されるには、そして愛するには、勇気が必要だ。
ある価値を、これがいちばん大事なものだと判断し、思い切ってジャンプし、
その価値にすべてを賭ける勇気である。(188)
愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しかもっていない人は、わずかしか愛することができない。(190)
理にかなった信念とは、自分自身の思考や感情の経験にもとづいた確信である。
それは、何かをやみくもに信じることではなく、私たちが確信を抱くときに生まれる確かさと手ごたえのことなのだ。信念は、人格全体に影響をおよぼす性格特徴であり、ある特定の信条のことではない。(180)

自分自身を「信じている」者だけが、他人に対して誠実になれる。なぜなら、自分に信念を持っている者だけが、「自分は将来も現在と同じだろう、したがって自分が予想しているとおりに感じ、行動するだろう」という確信をもてるからだ。(183)

そう、結局は自分次第なんですよね。
努力やめて勇気出すと、人生一瞬で変わるから。

おわりに

それにしても、30年以上前に初版が出ているこの本。
30年前の時点で、マインドフルネスの必要性とか
現代社会の問題・課題点をこんなにも的確に論じているのはすごいよね。

でも逆に言うと、
この「愛」の分野は30年間ぜんぜん変化・成長してないともとれるから
危機感も感じる。

目に見えないものだし、わかりやすいスキルとか稼ぎ方とかが
気になってしまう昨今だけど、こういう深いテーマを探究することにこそ
もっと時間・お金をかけていくべきだなと改めて思った。
自分自身もそうだし、もっと、社会全体でも。

 

まだまだ紹介しきれなかった名言・至言が盛りだくさん。
ぜひこれを機会に読んでみてください^^

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今日も良い日に!

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